唐変木自序

 津軽に生を享けた二人の男と女が、戦争を境に夫々吸寄せられるように上京し、この広い都会で巡り合って私が生まれた。末弟の父は口減らしのために東京での自活を余儀なくされ、母は腕に職を持って自立する夢を都会に思い描いた。父は旧制高等専門学校で外国語を修めると、小さな出版社で働き、母は裁縫で家計を助け、やがて若い二人は横濱の片田舎の丘の上に小さな一戸建ての家を建てた。周囲を野山や田畑に覆われ、川に浸れば鮒を漁り、田に入ればアメリカザリガニを摑み、山に登ればアケビを捥ぐ野生児として、私は育った。自然の中でこころ優しき人間に育って欲しい、という両親の願いのもとに。やがて学齢期半ばにして、両親は都心に家を買い替えた。この競争社会の中で、息子を逞しく鍛えあげるためである。それは私自身との闘いの入口でもあった。耳順う齢を迎え、降りていく余生を里山に隠棲しつつ、なだらかな山裾のような気持ちで来し方行く末に思い巡らす。

News

2018年10月31日◆ 「ジェラール伝・翻訳」を改訂しました。
2016年6月8日◆ 「マイ・バックページ」を追加しました。
2015年9月25日◆ 「唐変木の書棚より」を追加しました。
2012年8月2日◆ 「街の記憶」をアップデートしました。
2012年3月20日◆ 「ブログという日録」を始めました。
2011年6月4日◆ 「A.ジェラール研究」に「街の記憶」を追加しました。
2011年3月5日◆ 「ジェラールの航跡」にPecha Kuchaでのスライド・プレゼンを追加しました。
2011年2月26日◆ 「ジェラール伝・翻訳」を追加しました。
2011年2月20日◆ 「横濱スケッチ」14編を追加しました。
2011年2月12日◆ 「習作集」5編を追加しました。
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