岬町だより

 35年前、今は亡き父が老後の隠棲を夢みて購った外房の別荘地。父は夢果たすこともなく生涯働き詰めで77歳の生涯を終え、往き場のない土地が遺された。外房とはいえ内陸の何の変哲もない竹林に買い手のつく筈もないまま、私自身の定年が目前に迫る。

 ふと気づけば二度の海外赴任で倉庫に預け入れた4,000冊に及ぶ蔵書と洋家具一式。老後の生計に倉庫代も莫迦にならぬことに思い至り、この地に書庫兼書斎を建てて収蔵する。表札に「書圃・唐変木」を掲げ、肩書潰えし退職後の閑居となすべし。

 最寄のスーパーまで徒歩1時間半。コンビニの1件もなく不便この上もない場所ながら、蔵書に囲まれ、竹林そよぐ風音聴きながら終日読書に浸るもまたよい。しかし、社会的動物である人間は、やはり何処かに人との繋がりを求めざらんものと見える。そんな、外房はいすみ市岬町の生活を徒然に綴っていこうと思う。

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