習作集

 入社二年目、経理に配属されて腐っていたときに、ふと思い立って書き始めたスケッチ。今読めば、吉行淳之介「夕暮れまで」の相当下手なコピーに過ぎない。最初の読者であり良き理解者となってくれたのは、当時、経理に車椅子で通っていたH君で、こんな作品でもとても楽しんでくれた。彼とはよく酒を飲みに行った揚句、人通りのない夜の神田錦町界隈の坂道を車椅子で駆け下りたりして遊んでいた。これを執筆した直後に私は異動となったが、H君は一、二年して不幸な噂のものとに会社を去ることになった。私の最初の読者となった彼のことを、生涯忘れることはないだろう。

☛ 「たそがれ色の画用紙に描かれたカリカチュア」
 北ヨーロッパのデュッセルドルフでは、夏冬の日中時間の差が大きく、夏は夜遅くまでライン河畔に遊ぶことができる。仕事があってもあくせくせずに、人々は河畔に集まり悠久の自然に身を委ねる。そんな自然との共生がゲルマン民族の生活の中には至るところで見られるのだ。
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