- 父の夢破れ ― 岬町こと始め ①  2017/06/09 18:34
今からかれこれ35年前のことである。丁度私が社会人になった前後の時期にあたる。自宅の一戸建てのローンを55歳で完済した父は、あるひとつの老後の夢を実現しようと考える。父は津軽という寒冷地で18歳までを...
- 友よ謐(しず)かに眠れ  2017/05/08 07:01
中学時代の旧友の訃報が届いて三ヶ月が経とうとしている。今まで経験したことのないような喪失感に囚われ、この間、実利的な課題でその隙間を埋めることばかり無意識に努めてきたようだが、連休でふと立ち止ま...
- 11月の朝顔  2016/11/21 23:39
横濱に住んでいた頃だから、もう六、七年も前の初夏のことになろうか。家人が友人と入谷の朝顔市を訪ね一鉢を購い持ち帰った。竹づくりの支柱に蔓を捲きつけたその鉢植えの朝顔は大層元気がよくて深いブルーの...
- カーテン一枚隔てた「生と死」  2016/08/23 21:59
ドイツ赴任以来の持病「慢性腎臓病」が帰国後8年を経て悪化したものらしく、この2、3年の検診で常に尿蛋白と潜血が続いた。腎臓というのは「濾過機」なので一度(糸球体という)濾過装置の目が詰まってしまうと...
- 「彼」の歳になってしまった  2016/08/04 06:35
とうとう「彼」の没年と同じ齢を迎えてしまった。大学時代、「パニック」「裸の王様」「巨人と玩具」「日本三文オペラ」といった、初期の社会派作品群を貪るように読み漁った。そこには未だ「戦後」の匂いが残...