エッセイ


元町流スローライフのすすめ

投稿日時:2012/04/28 16:02


 毎回寄稿させて頂いている郷土史誌『横濱紀航』代表の大澤秀人さんから、元町自治会会報の「元町だより」に、駐在していたデュッセルドルフと元町の比較論を書いてみないか、というお誘いを受けた。もともとバンドとブラフを往き来する外国人を相手に商売を始めた元町だが、彼らの多くは英国人を中心にしたヨーロッパ人だった。確かに重なる部分があるのかもしれない。興の向くままに書き始めたらいつの間にか10個のショート・コラムになった。
 NYは35歳からの6年半、そしてデュッセルは47歳からの3年半だったが、ヨーロッパに住んで始めて、二つの街の時間の違いに気がついた。ドイツ人いやヨーロッパ人は悠久の時間の流れの中で生活している。それはライン川の水のようにゆったりと永遠に絶えることがない。一方で、ニューヨーカーいやアメリカ人は常に刺激を求めて何かに追立てられるように時を過ごしている、と。
 NYで生活するのなら若い時がいい。私の場合、これが逆だったら多分早熟しそして疲弊していただろう。ヨーロッパは「大人の街」である。培ってきた歴史がそのまま街の中に残されている。そして、そこに住む人間の哲学の中に生きている。
 ショート・コラムにも描いたように、ドイツ人は急がない、慌てない。そして忍耐強く質素である。プロテスタンティズムを生んだ北ヨーロッパの厳しい風土の中でストイックに培われてきた生活習慣なのだろう。
 そして改めて気付かされたことは、特に戦後の日本がいかにアメリカの影響を強く受けてきたか、ということだ。戦後の一時期には明治以降の日本の目標であったヨーロッパを向いていた知識人も少なからずいたが、高度経済成長はやはりアメリカを範とし日本をアメリカ一色に染め上げた。その延長線上に、今の日本は存在している。
 もう一度、ヨーロッパのスローライフを見直してみる時期に差し掛かっているのではないだろうか。そんな気持ちで「元町流スローライフのすすめ」を認めた。
>>> 「デュッセルドルフの街角から―元町流スローライフのすすめ」


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