エッセイ


JFK vs. Mr.Noodle

投稿日時:2012/04/27 00:21


 アーチスト以外の個人ミュージアムというものを、そう多くは知らないが、忘れられないのは、Boston郊外にある、JFK Libraryだろう。市内から離れた風光明媚なドチェスター湾岸の風景をそのまま装飾にしたような大窓の明るい吹き抜けのポスト・モダンなミュージアムを知ったのは、柴山哲也『ヘミングウェイはなぜ死んだか』によってであった。ヘミングウェイの妻とジャクリーンとの親交によって、ヘミングウェイの資料の多くがここに収蔵されることになったものだが、もともと、ここはニューイングランドを愛したJFKの偉業を称える個人ミュージアムである。
 展示スペースでは、実業家ジョセフ・ケネディの二男として産まれ、第二次大戦の海兵として武勇伝を遂げ議員を経て大統領となり、キューバ危機の緊迫を乗り越え黒人解放につきすすみながらも、銃弾に倒れるJFKの生涯を追体験できる。たった数発の銃声により断たれるJFKの行き場を失った夢と志には、どこか無力感を感じざるを得ないが、行動力を伴う若きリーダーの情熱は訪れる者を虜にする。
 さて、みなとみらいの荒野に赤茶けた無骨な直方体として出現したのは、「安藤百福発明記念館」カップ・ヌードル・ミュージアムである。いち企業家の志が果たして企業プロモーションを超えた感動を呼び起こしうるのだろうか、と半信半疑ながらも、ついつい、その演出に引きずりこまれてしまう。90歳を超えた安藤百福が開発に取り組んだのは宇宙食ラーメン。長期的なタームで企業の可能性を追求する企業家の志のスケールは大きい。毎年、新年に社員に贈る言葉として、2007年1月、「業を企てるは人に在り、業を成さしむるは天に在り」と色紙に記して数日後にこの世を去った。
 その死を悼んでNY Timesの掲げた追悼文が展示されていたので、その邦訳を試みた。アメリカ人らしい、ウィットに富んだ惜別の念が感じられる一文である。(「缶詰のスパゲティ」はこの記事中に出てきます)
>>> Mr. Noodle from New York Times


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