エッセイ


シャボン玉飛ばそ

投稿日時:2012/04/23 20:31


 シャボン玉飛んだ/屋根まで飛んだ/屋根まで飛んで/こわれて消えた/シャボン玉消えた/飛ばずに消えた/産まれてすぐに/こわれて消えた/風、風、吹くな/シャボン玉飛ばそ
 これは、大正11年に発表された、野口雨情作詞、中山晋平作曲の、誰もが知っている童謡である。雨情が早世した長女を偲んで歌詞を作ったとも言われているが、その真偽のほどは定かではない。
 今シーズンを前にオーナー会社の変更で紆余曲折を経た、横濱DeNAベイスターズのホーム・ゲームを見にいった。最大の懸案になっていた球場との入場料収入の料率交渉も改善が図られた上、「熱いぜ!」という、一読して誰もが熱血漢・中畑清新監督を想起するキャッチフレーズを球場の至る処で目にし、更には外野フェンスの上に新たに帯状の電光看板を配し球団独自の広告収入を目指すなど、涙ぐましい努力が見受けられ、こころなしか元気を取り戻したように思えるベースターズではあったが、残念ながらこの日、戦果はあげられなかった。
 午後遅くから降雨が予想される曇天の寒空の中、焼酎のお湯割りに身体を温めながらの観戦であった。5回裏に「シャボン玉」のアトラクションが用意されていた。紙吹雪や風船では、球場が汚れるという苦肉の策とも思われたが、入場の際に、シャボン玉セットを渡され、場内では100円で販売もされている。5回裏の攻撃が終わると一斉に一塁側スタンドから、虹色に輝くシャボン玉の放列が中空を覆い尽くす。試合に勝てば、終了後に更に、シャボン玉を舞い上げるという。
 思えば、プロ野球の声援も童心に戻ること。更にこの「シャボン玉」アトラクションがその童心回帰に拍車を掛けてくれる。シャボン玉を飛ばしたのなんて、何年ぶりだろうか、と考えながら、空高く舞い上がるシャボン玉の群れの圧巻にただ見とれている。ベイスターズの戦果も「泡沫」に帰すことなきことを願いながら、しばしシャボン玉に覆われるベースターズ・ファンの一人として佇んでいた。どうですか?貴方も一緒に、横濱スタジアムで「シャボン玉飛ばそ」。



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