幻想写真館4

NYはセントラル・パーク・サウスの宵を歩きながら、ふと目にしたある高級アパートメントのエントランス。はて、何処かで見た風景ではないか。そう、エドワード・ホッパーの「ナイト・ホークス」に似ている。バーに座る中年のカップルと俯いた後姿の酔客、そして皿を洗う店員の姿はないけれど。ホッパーは、都市建築のファサードに、孤独なアメリカ人の表情を重ねた画家であった。パーク・ウェストのアパートメントには、そんな素顔がよく似合う。

その昔、NYのピアノ・バーで中国人の留学生の女性と知り合いになった。酔うたついでに、片言の英語で「何故、中国人は世界中どこ行っても中華街を作るんや」と尋ねると、逞しき彼女は大蒜の匂いをぷんぷんさせながら、やはり片言の英語で「そりゃ、中華街作って中華料理喰わへんと、パワー出へんからや」と宜うた。至極名言。華僑のパワーの源泉はその食にあり。ということで、世界中どこに言っても、この不思議な風景には必ず遭遇することになる。そして、やがてわが身もこれに近くなりつつあらんや。因みに、硝子に映っているのはデュッセルドルフの街並である。

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