幻想写真館2

アルフレッド・ジェラールの背中を追って、彼の生没地であるフランスはシャンパーニュ地方の中心都市ランスに降り立ったのはクリスマスを目前にした或る冬のことだった。邂逅とはこのことをいうのだろう。一般展示されていない、とされる、ジェラールの日本コレクションに偶然巡り合えた、ランス市サン・レミ美術館を出たのは既に宵の帳の降りる頃だった。その門灯は何故か霞んで見えた気がする。

「カーニバル」と言われてすぐ思い出すのは、リオ・デ・ジャネイロだが、これは決してラテンのお祭りではなく、ヨーロッパの土着信仰がカソリックを通じて伝承されたものだ。だから、プロテスタントの北ドイツでもその土着性だけが生き残りながら、カーニバルは続いている。この祭りは、冬から春にかけての長い期間に亘るもので、あの仮装行列はその最後の数日を飾るに過ぎない。常に人間は死とそれに近接した深層の暗闇と背中合わせに生きている。こうした暗部があってこそ人生の「生と性」は輝きを帯びるに相違ない。デュッセルドルフのアルト・シュタットで遭遇したカーニバルの道化たちは、そんな人生の表裏に改めて思い至らせてくれる。
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