幻想写真館

バルセロナの海沿いのレストランでは、新鮮な海の幸を愉しむことができる。でもそれ以上に換え難いものは、天井まで届く大きな窓。外を見渡す、というのではなく、そこには見紛うことなく一幅の絵画が存在している。どこまでも青い空と碧い海。夕暮れを迎えた空には見たこともない輝きで宵の明星が輝いている。暗がりにも、レストランは灯りを燈さない。

ドイツはデュッセルドルフのアルトシュタット(旧市街)にある、ユーリゲというアルト・ビールの造り酒屋の屋根を、ふと酔い心地に見上げてみれば、な、なんと風見になっているのは鶏ではなく、酔っぱらって屋根によじ上った男の姿。思わずデ・ジャ・ヴゥのような錯覚に眩暈を覚える。この男は他ならぬ私自身なのではないか、と。雨が降ろうが雪が降ろうが、この男は風に身を沿わせながら千鳥足で同じ場所を徘徊している。そう、それが酒呑み、というものなのさ。
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